2020年上半期を振り返って。

 たぶん、このブログを書くことができているという事実が、これまでのサラリーマン生活と大きく異なることだとおもう。これまでは、与えられた仕事を処理し、全く意味のない政治闘争に巻き込まれたり、やる意味が解らない製品に携わってきた。そのため、自分のやってきたことを振り返る気にならなかった。今は違う。自分で選んで、自分でやろうと思った仕事をやっているので、精神的に余裕もあるし、なにより半年単位で自分のことを記して後から振り返ることに意味があると感じている。

 しかしながら、売り上げを継続的に立てていくのは大変だ。こちらの希望金額が通るのは、今までのコネで紹介された仕事のみだ。いや、コネですら国内最大手SIerのPMと同じ単価を出すのを渋られるのが現実だ。このことについて「この人にお金を出せば、それ以上の利益が上がると信じてもらえる説得材料が必要だ」と助言を受けたが、その説得材料はまだ集められていない。一つ考えたのは、英語ができるPMというのは珍しいと思うので(それこそ外資系コンサルティング・ファームにしかいない人材だ)、その需要がないかどうかを検索広告を出すことで確認してみようかと思っている。そして、これからコロナ不況だ、国内市場のプロジェクト・マネジメントだけ狙っていては食っていけないかもしれない。そう思うと、しばらく放置していた英語の学習と会話の練習を再開せねばならない。

 こんなことを考えられるようになるのも、独立して半年、最初のインフラ移行を成功させたことで余裕がうまれたからである。一人で仕事をして最初の一週間は「一人でやっていくのなんて無理無理」と思っていたし、今もその気持ちはあるが、より正確に書けば一人でやっていくのが無理なのではなく、一人でやっていくことで経営や人集めや営業や学習などにまで手が回らず、ジリ貧になっていくことが見えているからである。特に自分のプロジェクト管理能力を他の人に伝授するためには、自分の目の前の仕事ばかりやっていてはダメなのである。とりあえず食えるだけのキャッシュを集めて、マネジメントに興味があるセンスの良い技術者を集めないと話が始まらない。せっかく複数の人が集まれる会社という箱を用意したのだから、それを活かしてなんぼである。

 そういえば、独立してから、自分のやりたいことがより明確になった。自分と似たようなプロジェクト管理を行う人が少ないこと。ソフトウェアの開発で失敗するということは、その会社にとって避けられる損失を避けることができていないということ。その二つを合わせたら、ソフトウェアの開発で苦労する会社が減るのではないか。そうすれば、その会社の本業が進むことで国力も上がるのではないか。ちょっと大きく出たが、何をやるにしてもソフトウェアが必須となる21世紀において、ソフトウェアを失敗なく効率よく作ることはすごく重要だろう。そのノウハウを一人で抱え込まず志を同じくする人に伝えていきたい。そう思うようになった。これもサラリーマンであるとその企業の中でしか行動ができないということを突破するために必要なことだったのだろう。

 と、調子の良いことを書いているが、実際の会計を見てみると火の車に近い。まず、役員報酬を年に一度しか決められない。利益と役員報酬を連動させることが直接的にはできないようになっているのだ。儲かった分だけ役員報酬として、つまり経費として処理してしまうと、利益を出さないようにすることができてしまうからである。もう少し書くと、利益が出ない、つまり法人税を払わないということができてしまう。なので、役員報酬は会計期の冒頭に設定したら、その年はずっと固定。これは辛かった。世の株式会社の経営者がIPOに走る理由がよく分かる。自分が市場の期待に応えて利益を出せると信じることができるなら、IPOすればウハウハになるのが目に見えているからだ。また、年金も辛い。今まで会社が払ってくれた厚生年金の半額分も、自分で稼いだ金で払わねばならないのだ。このあたりが、一人で会社を立ち上げるか個人事業主として振舞うかの境目なのではないか。また、経費についてもネットに書いてあることと実際は大きく異なる。原則として事業に関係する出費でないと経費として認められないので、何でもかんでも経費にできるわけではない。以前ググったときに見つけたサイトには「プライベートカンパニーを作ればカバンでも靴でも経費にできる、なぜなら講演時にふさわしい服装をしなければならないから。」という記載があったが、役員が身につける服装は会社の経費としては認められない。まず認められる出費は、打ち合わせで喫茶店に入る、喫茶店で仕事をするぐらいだろう。これもサラリーマンであれば出費全額を会社に払ってもらうことができたが、自分の会社の経費にしたところで利益が圧縮できるというだけで、お金が出ていくことに違いはない。こういうことが積み重なり、会社を余裕を持って経営するためには、感覚値だが一人で年間2,000万円は売り上げないとならない。この数値はサラリーマンのころに感じた数字と全く同じであり、自分で会社を立ち上げたのなら、この2,000万円は自分で稼いでこないとならないのである。

 仕事をしつつ、仕事を継続的に得つつ、同じ仕事をしていては食えなくなるので将来の事業展開を考えつつ、日々過ごすことになるわけである。そんな日々を一人でやり過ごすことは到底できない。仕事上でもプライベートでも、完全に信頼できるパートナーがいないと無理だろう。幸いなことに自分には家族がいるし、すごくフレキシブルに対応してくれる税理士に顧問になってもらうことができた。この二つがなかったら、とうに諦めてサラリーマンに戻っていたことであろう。感謝。

 2019年の日記には、RuPaulの曲のことをいくつか書いたが、今私の中にあるのは、UntuckedでQueenがよく言及している “saboteur” という言葉である。日本語の字幕では「内なる悪魔」「自分の敵は自分」というように表現されている。仕事がもらえないのではないか、仕事がうまくいかないのではないか、出した請求書は受け取ってもらえるのか、本当に入金されるのか、今ある仕事がこれ以上発注されなくなるのではないか。物事をそんなふうに悪く考えてしまうことを “saboteur” と彼女たちは表現し、物事をよくないように考える数だけ、悪魔が自分の中に存在していると言っている。私も、そんなふうに考えたら、本当にそういう最悪な事態が起きてしまう。だから、自分の成果を最高と思えるところまで高めなければならない。昼夜や休日を問わず、できることをやり続けなければならない。このように考え方が変わったのが、この半年で得た一番大きな収穫のうちの一つであろう。そして、自分が “saboteur” に負けそうになっていると気づいたのもまた、Dragrace を見ていたからである。この番組から得られることはものすごく多い。